「松阪から四季 納豆の如く」 納豆職人 奥野 敦哉 |
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「第十三章 続・君も納豆体験を・・・」
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先月号から"誌上"納豆体験ツアーへ読者の皆様に参加をしていただいております。先月は「納豆工場見学〜納豆ができるまで」で納豆完成のところまでご案内をさせていただきました。今月はその続きから始めようと思います。 納豆体験ツアーとは、お客様に当店工場内を見学していただいて納豆がどのように作られるのかをご案内し、納豆の世界に楽しく浸ってもらうものなのですが、そのメインイベントが、ご自身で納豆つくり、そして、オリジナルの納豆ラベル作成を体験していただくところ、2大体験カリキュラムにございます。 |
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さて、ワラ包み体験ですが、ワラをたくさん束ねた民芸大つとワラというものを使います。 ワラ包み作業、これは本当に楽しい。普段、自分が作業をしていましても楽しいのです。 それが、時間(作業効率)のプレッシャーもなく心行くまで1本のワラ納豆包み作業を行えるなんて・・・。少し歪んでいるな、とか、このワラ1本変な方向に出ているのを抜いたら綺麗な形になるとか普段はそのようなことは考えませんので、できるだけ早く、たくさん、それでも形良く・・・と我々職人は作業しているわけです。それが納得いくまで1本を見つめ、整えるのです。当事者のお客様ならば「これが自分の納豆かぁ!」とか「どのような味になるのだろう?」とか「あのひとにこれをたべさせてあげたいな。」とか色々と思いをめぐらせて楽しんでいるのではないでしょうか。 すこし話の筋をズラします。 触れるのが後になりましたが、この納豆体験ツアーの料金なのですが"参加料1人いくら"という形はとらず"体験納豆代1本315円(1グループ10本以上で・送料込)"として設定しております。 参加料金を納豆代にした理由は、 1.少人数でも人数が増えても楽しめ、人数が増えれば一人当たりの負担が少なくなること。 2.お客様が途中で納豆本数を追加できること(結構いらっしゃいます)。 3.見学のみですと料金が発生しないこと。 の3つです。これらのことはお客様にとっても当店にとっても有益な設定となっております。 送料込みは10本分の代金が集まれば送料金額分は捻出できますし、送り先もグループ代表者にまとめて発送となり1回分で済みますのでご家族は言うに及ばず大学サークル旅行などのグループ旅行のお客様にも対応できるのです。 また、見学のみのお客様から何も代金をいただかないのですが、もし見学料とか入場料とか徴収すれば、知らず立ち寄ったお客様は渋々支払われ当社は潤うでしょうがすぐにお客様は寄らなくなってしまうことでしょう。長く先を考えるならば、納豆文化に少しでも触れていただきたい、また、社会見学でも利用をしていただきたい。納豆材料費が発生しないので案内に人員が割かれるくらいは良しとし、気軽に色々な方に見学をしていただきたいと私は思うのです。 |
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ワラ包み体験が終了しましたら次に「オリジナルラベル作成」です。 皆様の旅の思い出に自分だけのデザインを描いていただくのです。 これは工場の上階にあります応接間に場所を移して行っていただきます。デザインはお客様が納得いくまで練習され、清書を完成されるまで制限時間ナシで応対しております。お客様は世界で一つしかないオリジナル納豆に思いを込めて作成を楽しまれます。 また、応接間は12畳ほどの部屋でソファと机で作業を行うには入っても15人ほどで、それ以上の参加人数となる場合は「松阪農業公園ベルファーム」様にご協力をいただいております。 これは学校の社会見学や会社団体様の観光旅行などの体験バスツアーで20人〜40人ほどで参加をされる場合です。ワラ包み体験が終了した後、納豆工場から松阪インター近くのベルファームまで20分ほどでバス移動し、広大なベルファーム園内にある研修室を使いラベル製作を行うのです。 大きな研修室の無い当店にはとてもありがたい存在です。 そして松阪市の誇る施設ですので納豆体験ツアーだけでなくベルファームもご覧になられ、楽しくすごしていただけましたら私自身、松阪市民としてとても喜ばしく感じます。 |
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ベルファーム(ゲートハウスに研修室があります)
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以上が当店の納豆体験ツアーの全容なのですが、ここに至るまでに様々な試行錯誤がございました。 その中でも最も思い悩んだのは"納豆は1日にして成らず"でした。 これは納豆職人道は長い経験が必要という意味でとらえずに「納豆の作業は1日では終わらない」という言葉通りの事で、つまり私自身で一番最初から、納豆の手づくり教室は無理だろうという考えであったことでした。 例えば、モクモク手づくりファーム(第七章にて既出)みたいにハムソーセージ手づくり体験や当時はまだございませんでしたが宮川村フォレストピアのこんにゃく作り、パン焼き体験みたいに1日あれば楽しめる作業ではなく、納豆は完成まで何日も必要となりますので日帰りで体験は出来ないものと思い込んでいたのです。 それが私の概念を破ってくださったのが嬉野豆腐野瀬商店様でした。野瀬さんはすでに多くの学校や主婦サークルに豆腐教室の講師として出張をされており、野瀬さんのまだ新しい社屋の2階では豆腐料理もふるまえる手づくり豆腐教室も人気になっておられました。 平成11年1月、野瀬さんよりそれまで色々なご指導をいただいてましたが「納豆教室をお前もやってみろよ」とご助言下さったのです。 それは地元市民とのコミュニケーション、観光資源としてレジャーの一つとして旅行者へPRできること、そのことで地域の特産品としてのブランド確立を行うことができることなど色々な効果を説いてくださいました。 事実、納豆体験ツアーを当店が開始してからというもの、テレビ局からの取材依頼をいただくようになり、市役所観光課や地元観光協会の皆様との結びつきが強くなっていきました。 話を戻しまして、なぜ納豆体験が可能になったのかを述べさせていただきますと、野瀬さんに納豆体験教室が難しいということを納豆工程説明しながらお話していた時に出た野瀬さんの一言「全部させんでもええやろ!(全ての工程をお客様にしていただかなくてもよいだろう)」でした。 目からウロコが落ちました「そうですね!楽しいところだけつまんで体験していただいたら良いんですよね。熟成してから冷蔵便で普段やっている通販と同じように宅配すれば良いんです!これならできるし、失敗しそうなところは職人でやったら良いし。」 (奥野)、 「おぉ!出来たやないか!」 (野瀬)。 かくして納豆体験ツアーは準備期間2ヶ月を経て春休みを見込む平成11年3月にスタートしたのです。 現在は直売所たぬみせも加わったことで、観光施設としての一面を持つ納豆工場として多くの旅行者の方々に立ち寄っていただいており、納豆専門店としての当店の特徴のひとつとなっております。 次回は「たぬみせ3大まつり」について述べさせていただきます。お楽しみに〜。 |
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※ 応接間には松阪の資料やデザイン案帳もございますので
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