｢松阪から四季 納豆の如く」
納豆職人 奥野 敦哉
「第十七章 オーダーメイド納豆 エピソード３」
さて、前回エピソードも３回続いてしばらく別の話題が続き、9ヶ月後に再びこのエピソードに戻るということは何か特別なことがあったのかなと思われるのが普通で、その特別なことを知って頂きたいなと私も感じまして今回のエピソード3掲載となったわけなのです。
まずは、エピソード2の最後でご紹介をさせていただきました石川県白峰村の上野豆腐さんとのオーダーメイドその後の顛末を・・。前回はプロトタイプ完成時点での文章でした。納豆の内容は上野さん指定の「島根タマホマレ」大豆使用で「豆腐としては固まりにくく不向きであるが美味」な品種で納豆菌発酵した味は旨味も甘味もバランス好く、食感もネットリとしてとても美味しい納豆となるものでした。この納豆、最初4ヶ月は1ヶ月半に1回くらいのペースでしたのが、段々と上野さんの努力が実を結びまして開始半年後には1ヶ月に1回ペース、その後、月を追う毎に月間2回ペース、さらに3回ペース、そして今では毎週発送となっております。ここまで急激にペースが伸びるのは珍しいことで上野さんの努力がどれほどすごかったのかが想像できます。
また、その努力を支えたのは恐らく使用大豆です。上野さんから持ち込まれた使用大豆ですが、白峰村が市町村合併で白山市になったのを契機に「地元、松任産のオオスズ大豆」に変わったのです。松任産オオスズは納豆になると味の輪郭がしっかりして、口の中でほぐれるとしっかりと納豆の良い香りがして、コクと粘りも良好で後クチもスッとさわやかに引いて、食べやすいのに納豆の奥行きが感じられるような味わいです。この大豆の選定が上野豆腐さんの真骨頂だと思います。松任産オオスズに変わってから急激にペースが伸びていった気がします。
| 次に紹介したいエピソードですが、当店のこだわり納豆の自然水納豆森の番人に始まる「三重の地納豆」シリーズで使用します大豆は地元のフクユタカ（無農薬栽培）ですが、この大豆を栽培してくださっているのが三重郡菰野町のエコファーマー集団、農業生産法人（有）エイ・エム・シイさんです。毎年開かれる勉強会に私も参加をさせていただきまして皆さんの熱意を感じながら納豆作りに励んでいますが、今回、菰野町を全面に押し出したオーダーメイド納豆を創らせていただくことになったのです。お米も栽培されている（有）エイ・エム・シイさんでは、地元でおにぎり直売所「おにぎり村」を運営されています。美味しいと地元で評判のお店で「農家の氣もち」というブランドで自慢のお米で握ったおにぎりを販売していらっしゃるのです。今度は自慢の大豆でつくった「農家の氣もち納豆」をお披露目してみようとのことでした。ものすごく光栄で、今まで自分の行ってきたことがすべて報われたような嬉しさでした。私も「氣もち」を入れて納豆にいたします。この納豆はまさに地元に愛されて順調に消費を伸ばしております。 |
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あとひとつ、喜びのエピソードを。エピソード2にて記載させて頂きました大桃豆腐さんよりご紹介をいただきまして、ご友人、東京練馬の大山豆腐店さんのオーダーメイドを制作するようにとお電話をいただきました。納豆自体は大桃豆腐さんのオーダーメイドをお召し上がりの上で気に入っていただいた様子で、大桃豆腐さんと同じナカセンナリ大豆の納豆内容に大山豆腐店さんオリジナルラベルを作成して巻くということになりました。また、嬉しいことに、お店の場所が大桃さんと近いとのことで、商品は大桃豆腐さんへ一緒に届けてくれればよいとのことでした。おかげさまで製造するのも内容が一緒なので仕込み回数も楽になり、運送費も余分にかからず有り難いことばかりで友情を感じた瞬間でした。 今回のエピソードはこれだけですが、オーダーメイド納豆はいつも色々なエピソードが産まれ出てくるのでライフワークとしましてはこれほど楽しいものはありません。次回は「バージョンアップをくわだてる」です。お楽しみに。 |
※ 堅豆腐 上野とうふ店
石川県白山市桑島４−９６−２９ TEL 0761−98−2707
ホームページ http://www.katatofu.com
※ 農業生産法人 （有）エイ・エム・シイ
三重県三重郡菰野町大強原８８４ TEL 0593−94−2241
おにぎり村（ミルクロード沿い） TEL 0593−93−5107
※ 三重の地納豆シリーズ
自然水納豆森の番人・伊勢ひじき納豆・宮川村きゃらぶき納豆・嬉野天然梅干し納豆他、地元素材を合わせて特産民芸納豆にしています。
※ こだわり豆腐 大山豆腐店
東京都練馬区練馬４−１９−７ TEL 03−3992−2634